作品を知ったときの心境を教えてください！

「オーディションの前に初稿を読ませていただいたんですけど、千夏が乳がんになってしまうこととか、家族のこと、恋の複雑な部分など少し重たい映画なのかなという印象だったんです。でも脚本を読んだときに、映像になる前からすごくあたたかい世界が広がっていて、重たさを感じさせないすごさがありました。この映画を撮り終わった後に舞台の再演を観させていただいたのですが、家族は違えど同じ家族のあたたかさを感じました。この作品の中で千夏は自分の中でいろいろ思ったり、ときに相手とぶつかったりするんですけど、周りのキャラクターがずっと千夏と向きあっている姿が印象的で。人と人が真剣に向き合っていることが、ぬくもりを感じるところのひとつなのかなって思いました」

オーディションに向けて準備したことはありますか？

「乳がんに関してももちろん調べたんですけど、千夏という役の部分を考えていきました。監督にもお話ししましたが、私は千夏に共感できるところがたくさんあって。撮影しているとき私は１８歳で千夏と同じ年齢でしたし、あと母ととても仲良しな部分など、とても似ているところがあって。なので、母の恋愛とか、母からの気持ちとかもとてもわかるので、ひたすら共感して台本を読んでました(笑)。監督との時間でとくに印象に残っているのは、オーディションのとき千夏のシーンをいくつか演じさせていただくことがメインになってくるんですけど、今回はそれ以外に監督が、私がどういうふうに育ってきたか、母とはどういう関係なのか、私自身のことをたくさん聞いてくれたんです。こんな経験は今までなかったので嬉しかったです。あとは、「主演として一緒に戦ってくれる人を探している」っておっしゃっていたのも印象に残ってます。監督のこの作品に対する愛、気持ちが溢れていて。オーディションは緊張もしていたんですけど、楽しんで受けた記憶があります」

どう演じようと思ってましたか？

「いい意味であまり悩まずに演じさせていただけたなって思っています。ただ１８歳って高校が終わって大学生活が始まるからちょっと大人になった気分だけど、まだ自分では決断できない子どもの部分もあって。そういう危うい部分は演じている上で意識したところかなって思います。同じ歳の千夏を演じて、すごく考えさせられました。それこそ乳がんとか、自分が病気になるということを今まであまり考えたことがなかったので、作品が決まって病気のことに関していろいろ調べていったけど、今って情報社会でたくさんの情報が溢れかえっていて。結局どれが正しくて、何をどうすればいいのか私自身もわからないことだらけ。実際千夏もそうだったと思うので、そこは動揺というか私だったらどうしていたんだろうとか。私は演じる上で、共通点を見つけることが多いんですけど、千夏にとってはあるひと言がきっかけでコンプレックスになってしまう話でもあるんです。私も含めて人間ってみんなコンプレックスってあるし。私が共感したように、観てくださる方も年齢は違えどすごく共感しやすい作品なのかなって思います」

共感できることって具体的にどんなことでした？

「年齢が大きかったのと、私も母と仲がいいからこそ母の恋愛とか、自分だったらどうするかなとか考えてしまってましたね。物語の中で母に向かって「気持ち悪い」って言うシーンがあるんですけど、その言葉の中には仲がいいからこそ、お母さんのことが大好きだから心配の気持ちもあるし、っていうすごく複雑なところは私自身もそう思いました。私自身、母とは日常的に「早く寝なさい」とかそういうケンカをよくしてます(笑)。しっかり向き合って話し合うのは、私の仕事に関してです。お母さんもすごく心配してくれている部分があるからこそ、意見が食い違ってぶつかることもあります。ただ私のお母さんは私が思っていることをしっかり感じて聞いて、その上ですごく的確な答えを言ってくれるのでとても信頼しています。この仕事を始めるときも、“やりたいと思うのであればしっかり最後まで責任を持ってやりなさい”と言ってくれたので、いろいろなことを話し合っています。」