ダークな要素は不可欠だった

「『呪術廻戦』「懐玉・玉折編」は、青春時代のどうしようもない別れの瞬間といったところに主軸があるのではないか、と思っていて。物語の主要なキャラクターである五条悟と夏油傑がしたような強烈な経験ではなくても、僕たちの日常でそれと本質が似ている些細なことは、たくさん起こっていますよね。たとえば学生時代に仲が良かった友だちと、誤解ひとつで別れてしまったりする。でもそのときはすごい大事件だけれど、大人になってから振り返ったら、青くて美しい思い出になっていることもある。『いろいろな悩みを抱えていても、大人になったときにつらかったものが相対化できて、意外と悪くなかったなと思えたりする』ということを歌にして伝えないと、という気持ちがあったんです。そのメッセージを『呪術廻戦』によりかかりながら歌にできたらと思い、『青のすみか』を作りました」

「扱っていることは別れではあるのですが、青春がテーマだったから、みんなが思うイメージとしては、さわやかで弾ける感じですよね。なので音はふと流れてきたのを聴いたときに“ さわやかな曲だな”と思ってもらえることを意図して作りました。でも『呪術廻戦』という作品はダークファンタジーだし、重たいテーマを扱っているので、そのエッセンスも忘れてはいけないなと思っていて。基本的にバンドサウンドなんですけれど、おばけっぽい音や、普通のバンドサウンドでは使わないような音を入れていて。曲の入りも少し不穏にしました。青春時代もきれいな青色一辺倒ではなくて、いいことばかりじゃないから、ちょっと濁っているじゃないですか。だからジャケットや歌詞カードでも藍鼠色という、藍みをおびた鼠色を使っています」