七夕の物語

　さて、皆さまは七夕についてどれくらい知っていますでしょうか？　なんとなくは知っている方も多いと思います。自分もなんとなくしか知らなかったので、少し調べてみました。簡単に言えば織姫と彦星の恋物語から影響を受けて7月7日になると短冊に願いごとを書いて笹竹に飾るというものですね。その起源にはどのような物語があったのでしょうか？

　あるとき、神の娘で大変働き者であった機織りの織姫と、同じく働き者であった牛飼いの彦星は神の導きにより運命的な出会いを果たし、2人は恋に落ちます。そして結婚するのですが、結婚してからというもの仲睦まじいが故に2人は働かないようになってしまいます。そんな2人を見て怒った神が天の川の両端に2人を引き離し、1年に1度七夕の夜だけ会うことを許しました。そして機織りが上手な織姫を見て、織姫のように何かの上達を願うことから七夕に願いごとをする文化が始まりました。

　そんな物語があったことで七夕にわれわれは七夕の日に織姫と彦星思い出し、願いを込めて短冊を飾るのでした…。

願いすぎなのかもしれない

　という物語を踏まえた上で思ったのですが、その伝説の物語から恐らく数千年経った現代、われわれは織姫と彦星に願いすぎではと少し心配にも似た疑問を持つようになりました。ひとつの恋物語から生まれ、何かの上達を願う真っ直ぐな心で飾られていた短冊であったはずが、インターネットで調べてみても『〜になりたい』『〜が欲しい』という具体的なゴールのみを求めているものが多い気がします。改めて七夕と自分の形について僕なりに考察をしました。

伝説になることの重責

　そして僕は織姫と彦星の気持ちについてもどうしても考えてしまいます。今や織姫と彦星の恋物語は伝説です。誰もが知っていて2人の恋に自らの姿を投影し、七夕を通じて恋の願いを叶えようという人もそう少なくないと聞きます。日本人なら誰もが知る彼らの恋物語に、われわれは多くのものを託しすぎているのではと考えました。初めは神の導きこそあれど2人は出会い、恋に落ちるまではあくまでもお互いの心の中に流れる直感的な感覚が走っていたと思います。しかしそれから数千年、これほど祝われ、願われ、理想像のように思われ続けている現状に対し、織姫と彦星は若干なりともプレッシャーを感じてはいないでしょうか？1年に1度、思い人に出会えるその日に別の世界の数えきれない人々が自分たちを想って何かを願い、その結果に一喜一憂する、そんな責任重大な1日になってしまっては僕だったら食べ物が喉を通らないでしょう。

　ここで思い出してほしいのが、織姫と彦星のもとから持ちうる性格です。2人は自分の職務に厳格なのはもちろん、それよりも常に愛を選んで生きてきました。そんな2人に一国の国民の願いを1日で全て委ねるというのはあまりにも責任重大な気がして、もはや僕も食べ物が喉を通りません。

自らに願う力

　とは言え願う力は本当に素晴らしいものです。人は人生を通じて多くの人、物に出会い、喜び、悲しみを背負います。その中できっと目標を見つけ、そのために前進することで苦しみに耐え、かけがえのない幸せを見つけるのでしょう。そして常にその原動力となるものこそが『願う力』なのではないでしょうか。今の自分が出来なくても、きっといつかできるようになる。今は目標とは程遠くても届くことを願って努力する。願うことで次の自分への道しるべが見えてくるのです。

　人の心は支えなくして生きてはいけません。だからこそ遠い昔から人類には形は違えど信仰心があり、願う相手がいるのでしょう。しかし僕は思いました。時には立ち止まって自分を信じ、自分に願ってもいいのではないでしょうか？　それは無意味なことにも思えるかもしれないですが、その結果願いが叶えばそれは自分にとって大きな自信になります。ときには織姫や彦星よりも自分を信じて短冊ではなく自分に願う、何も飾られていないまっさらな笹竹が風に揺られているのを心穏やかに見つめる七夕があってもいいのではないでしょうか…

て言えばみんな願いごとしないですかね？　今年は本当に願いごとを叶えたいんで母数を減らす作戦でいきたいんです(笑)。

そしたら叶いやすいかもしれないじゃないですか。

だから今年は僕以外、七夕に願わず己に願うべし！