宿題

　これも夏休みの定番ですよね。そしてここにこそ、その人の人となりが大きく反映されていると思います。なんとなくですが夏休み初日、僕の頭の中では究極の３択を余儀なくされていました。

① 最初にすべて終わらす

② 日々、こまめに少しずつ

③ ラストスパートにすべてを賭ける

長すぎる前振りがありましたが、ここからが自問自答です。さて、この３択の中でどれが最適解なのか、最大の問いかけが夏休み初日に発生するのです。

　もちろん理想を言うのであれば、①が何よりもベスト。ようやく休みに入ったのにすぐにまた大量の活字と目を合わせなくてはいけないという恐怖はあっても、義務を終えた人間に待つのは天国、なんの恐怖もない屈託の無い笑顔でラジオ体操をこなし、プールにレッツダイブする切符を得ることができます。そう一度は覚悟を決めて机に向かいます。ただどうしても頭に浮かぶのは、すぐにペンを握ることの恐怖です。数日前まで目を背けたくとも眼前にあったテスト期間という戦乱の時代、その時代を終えてようやく自由を手にした人間にもう一度ペンを握れと言っても指が震えます。体が芯から震えます。よってこれはどうしても得策とは言えないでしょう。

　では③か？今は宿題のことは完全に忘れて目の前の自由にひたすら酔いしれ日々を過ごし、ここぞという時を決めてそこから決起する。これは心が疲れている人、最後には己を律する強い心を持つ人にとっては、この上ない選択肢と言えるでしょう。確かに、多少なりとも親から「宿題はやってるの？」という、地獄に向かっていることを警告するアラーム音のようなものが隣の部屋から聞こえてくるかもしれません。それでも今はただ与えられた幸せを享受し生きることが、夏休みとして最適かもしれません。しかし僕は知っています。苦手なものは追い込まれるともっと苦手になる。その苦手意識はまるで呪縛霊のように夏休みを過ごす自分の背中に付きまとう。頭では忘れた気でいても、体が恐怖を覚えています。ふと机に目を向けると、とたんに膝から崩れ落ちる日がやってきます。よって、これも得策ではないでしょう。

　消去法ではありますが、そうなると答えはひとつ、②です。そうなんです。数多くの大人がこの作戦を勧めるのは教育のためではなく、理論的に考えてもこれが最適解だからです。学生としての正解の姿であるからこうしろというのでは無いのです。もっとも苦痛が少なく、幸せに過ごせるからこうしろと言うのです。ラジオ体操しかり、宿題しかり、こういった日々のやるべきことをどうこなすかは、大人になってからの人間性に直結します。宿題を毎日頑張るということは、この頃は小さな一歩に感じるかもしれません。でもこの一歩こそが、全ての明暗を分かつまさに紙一重の一歩になりうるのではないでしょうか。こうなると、親の「宿題やった？」も、地獄に向かう自分に吊るされた一本の命綱にも見えてきます。親に感謝し僕は喜んで、「② 日々こまめに少しずつ』を選ばせていただく！

なんて考えてるうちに、だいたい8月31日になってますよねー。

小学生時代、この一連の流れを6年間繰り返しましたね。本当に宿題は嫌いです。