ドキュメンタリー映画『オートレーサー森且行約束のオーバル劇場版』が11月29日より全国公開となる。『JUNON』が最後に森さんにインタビューをしたのは、約30年前だった。本気でオートレースをやっていきたいと熱く話してくれた、まっすぐな瞳が印象に残っている。その純粋な瞳も、柔らかく温かな笑顔も、あのころのままだ。

PROFILE

森且行

もり・かつゆき　1974年２月19日、東京都生まれ。’88年にアイドルグループSMAPの一員に。’91年にCDデビュー。また、俳優としても活躍。’96年にグループを脱退し、芸能界を引退、オートレーサーに転身。’20年に日本選手権オートレースで、初優勝を果たす。’21年１月にレース中の落車により骨盤骨折。’23年４月、川口オートレース場で２年３か月ぶりに復帰を果たし、勝利を収める。再び、日本一を目指して命がけの挑戦を続ける。

ヘルメットのこだわりはSMAPのメンバーカラー５色を絶対に入れること

――お久しぶりです。JUNONには、なんと約30年ぶりの登場です！

　そうですよね。覚えてますよ（笑）。

――映画『オートレーサー森且行約束のオーバル劇場版』を拝見して、やはり森さんは天性のスターだと感じました。ご自分のなかに今もアイドルの要素があると感じますか？

　どうなんですかね。よく「キラキラしてる」とは言われるので（笑）、周りの選手と比べるとアイドルっぽく見えるのかな。やっぱり８年間グループにいた感覚は抜けないのかもしれないですね。ただ、ヘルメットをかぶったら、もうキラキラなんて関係ない。そこからは勝負なんで。

――ヘルメットはご自分でデザインされているそうですね。

　こだわりはSMAPのメンバーカラー５色を絶対に入れることです。毎回レースに行くときに一番に身に着けるものなので、かぶる瞬間に、その色を見て、みんなのことを思い出すんです。そうすると彼らに守ってもらえるような気がして。つらくなってきたときは、その色を見て自分を奮い立たせる。５色が星の形にはめてあるのは、僕自身、いつまでもスターでいたくて星にしたのかも。そもそも星柄が好きなので、星がついた洋服を見つけると「星だ！　いいな！」って買っちゃうんです。ファンの人も喜んでくれるからクセになって（笑）。コンバースのスニーカーもたくさん持ってるんですよ（笑）。

中居くんの「いい人でいてほしい」という言葉を胸に

――作品のなかで、森さんは日本選手権で優勝されたときは涙を見せたのに、ケガからの復帰戦では涙を見せずに笑顔だったのが印象的でした。
　日本選手権のときはレースで初めて泣いたんです。それから事故で痛い思いをして思いっきり泣いて。「二度と泣くもんか」って決めてたんです。復帰戦で「やっとオーバル（サーキット）に帰ってこれたんだ」と思った瞬間は泣きそうだったけど、ここで泣くようだったら先にはいけないなと思ってグッとこらえました。
――さかのぼると、落車後、初のインタビューのときには「絶対に復帰する」と宣言されてましたね。
　あのときは頭のなかである程度のプランができてたんです。そうでなければあの言葉は出てなかったと思います。ただ、自分にプレッシャーをかけて、テレビに出て「復帰します」と言ったら、もうこれは復帰しないのはカッコ悪いじゃないですか。だから、自分を追い込む手段のひとつとして利用させていただきました。
――いつ「復帰できる」という思いが芽生えたんですか？
　実際は、厳しいかなって感じる時期もありました。でも、やっぱり石井先生の言葉かな。「大丈夫。歩けるようになるよ」「普段の生活はできるようになる」って言われたときに、「これは復帰できる」って。これが競輪選手だったら難しいかもしれないけど、オートレースはエンジンが人間を運んでくれるので。あとは自転車に乗れれば大丈夫だろうって、退院してからは自転車に乗りまくりました。立ちこぎをすると、神経が麻痺してる部分があって、ペダルをうまくこげなくて。それをどこに力を入れたらいいか確かめながらバランスを取る練習をたくさんしました。
――その痛くて苦しいリハビリ中も、森さんは周囲の人にやさしい笑顔で接していましたが、ご自身で何か心がけていることがあるんですか？
　僕がSMAPを出るときに、中居（正広）くんが番組のなかで「おまえには、いい人でいてほしい」と言ってくれたんですよ。それがずっと頭に残っていて。その言葉があるからこそ、痛くても周囲に八つ当たりするようなことは絶対にやっちゃいけないなって。先生方にも言われたんですよ。普通だったら「痛いから早くしてくれよ」とか言うのに、僕は「すみません。お願いします」ってずっと言ってたって。でも、命を助けてくれて、治してもらってる先生に「早くしろ」なんて言えないですよね。僕が、どんなに痛い思いをしても感情をコントロールしてるのを見て、先生が「すごい性格してますね。それはどこからきてるの？」って。僕は「いいことも悪いことも、本当に痛いことも全部この年で経験してきたから大丈夫なのかもしれないです」って答えたと思います。　
　当時の中居くんは「変に天狗にならないように」とか、いろんな意味で言ってくれたと思うけど、きっと「そのままのおまえでいて」という感じで言ってくれたんじゃないかな。
――メンバーの存在が、今もつねに心のなかにあるんですね。
　グループを出た瞬間から、５人は僕のなかで止まってるんですよ。もちろん、そのあとの５人の活躍も見てますけど、僕にとっては、そのままの５人なんです。復帰したときはみんながコメントを出してくれて、めちゃくちゃうれしかった。「本当にいい仲間を持ったな」って。それだけすごいグループだったんだと思います。僕は５人に出会えて、いい時間を過ごせて本当に最高です。