TODAY’S CONTENTS「解く①」▶︎▶︎▶︎「カルチャーを読む」難波功士さん

なぜ今、若者のあいだでレトロ文化が心を震わすのか？　

さまざまな変遷を経て、進化を続けるレトロ文化の魅力を関西学院大学教授の難波功士さんに社会的な情勢を踏まえつつ、教えてもらいました！

【PROFILE】

1961年大阪府生まれ。大学卒業後、’84年博報堂入社。12年間の会社員生活を経て、’96年関西学院大学社会学部へ転職。専門は文化社会学、若者文化史、メディア史など。

令和のリバイバルブームを加速させたのはＳＮＳ

リバイバルブームは昔のものを懐かしむ気持ちと、そこに新しい発見が合わさって、社会全体が“ある時期”を懐かしむうねりのようなものが起きたときにブーム化するのではないかと思います。

図解（下記参照）からみるように、今は第三次リバイバルブームのまっただ中と言っていいでしょう。10代、20代の若者にしてみれば、昭和も平成も遠い過去なのでそのあたりは一緒になってると思いますが、ここまでレトロブームが盛り上がったのは、YouTubeやSNSの存在が大きいのではないでしょうか。

Z世代を中心に純喫茶や町中華など昭和レトロな写真をInstagramにアップする人が増え、ブームにつながったし、シティポップの再評価は海外からですよね。Spotifyなどのプラットフォームがなければここまでブームにならなかったと思います。SNSの存在も大きいですね。おもしろいものがあったら、それをすぐ拡散して世界の人たちと共有することができる。このように音楽やファッションなど、日本の過去のコンテンツが海外の人たちに評価されて、日本に逆輸入されて流行るという流れもふえてきています。

アニメや漫画も昔はオタクの文化のように扱われることが多かったのですが、今では以前よりも受け入れられ、みんなの共通体験にもなっています。特に『SLAM DUNK』は、1990年代のアニメですが、3年前に映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開されブームが再燃して、世界中から映画の聖地として江の島に観光客が殺到したのもまだ記憶に新しいですよね。

今後は少女漫画のリバイバルブームに期待

また、ひと昔前は日本の文化に憧れてマネをするアジア圏の若者が多かったのですが、最近ではK-POPアイドル、特にNewJeanz（現NJZ）の存在が大きくて。コンサートでハニさんが松田聖子さんの『青い珊瑚礁』を歌って話題になったり、原宿系ファッションのぬいぐるみリュック、Y2Kファッションなど、彼女たちに憧れた若者たちがリバイバルブームを牽引したのではないでしょうか。

そもそもなぜリバイバルブームが起こるのか？　私が思うに子どものころに触れてきたコンテンツを大人になって作り手側になった人たちが、昔のものを懐かしんでリバイバル作品を作ったりできるようになったからと考えます。幼少期『仮面ライダー』や『ウルトラマン』を観て育った監督・プロデューサーの庵野秀明さんはこの事象を代表する方ですよね。そのほかにも、CMなどいろいろなジャンルで過去のものを掘り起こしている気がします。

またゼロから何かを生み出すよりも、過去にヒットしたり話題になったりしたものをアレンジしたほうが、バズりやすいというのもありますね。親世代は子どものころにハマっていたものを懐かしく想い、子どもはそれを新しく感じて盛り上がれるのではないかなと思います。

さらに、親子の共通の話題として、ディズニーやUSJなどのテーマパークは、リバイバルブームの宝庫といってもいいですね（笑）。ディズニー映画は何度もリメイクされていますし、過去のコンテンツがリアルタイムで体験できるようになっていて、さまざまな形でネット上にも残っているので気楽に楽しめる世の中になってきたなと思います。

それぞれが過去にどんなコンテンツに接してきたかが大きいとは思うんですけど、私が今後、注目しているリバイバルブームのトレンドは少女漫画です。私は2つ上に姉がいるので、少女漫画を読んできたという体験があるからか、1970年代から1980年代の作品はまだまだ掘り起こせるおもしろさがあると思っています。

先日、劇場アニメ『ベルサイユのばら』が公開されましたが、1970年代に少女だった方はもちろん、若い世代からも支持されました。このように50〜60代の女性に影響を与えた漫画を掘っていけば、また新たなトレンドが生まれると思っています。

【リバイバルブームの変遷はこれだ！！（図解）】↓↓